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心不全と高血圧

心不全と高血圧の関係

心不全の発症には2つの要因があります。1つは心臓の拡張期に血液を取り入れる機能を損なう拡張機能不全で、もう1つは収縮期に全身に血液を送り出す機能を損なう収縮機能不全です。
拡張機能不全は心室の壁が硬くなることによって起こります。それにより心室は十分な血液を取り込むことができず、1回の収縮で送り出す血液量が少なくなります。高齢になるにつれ心筋が硬くなる傾向があり、拡張機能不全が起きる可能性が高くなります。

拡張機能不全の一般的な原因として挙げられるのは、適切に治療されていない高血圧です。
高血圧は、収縮期・拡張期の圧負荷の増大によって左室の収縮・拡張機能に障害をもたらします。また、左室リモデリング(心筋の線維化)を促進し、壁ストレス増大による酸素消費量の増加、微小循環障害や冠動脈内皮障害による心筋虚血によって心筋障害を進展させます。

高血圧は心不全の基礎疾患として頻度が高い

高血圧は心不全の基礎疾患として最も頻度が高く、心不全は高血圧の重症な合併症となります。
疫学的なデータでは、高血圧のある患者さんは男性で2倍、女性では3倍も心不全を発症しやすくなるとされています。また、大規模臨床試験の成績では、降圧治療により、高血圧患者における心不全発症率が減少することが明らかにされています。

拡張機能低下の早期発見が大切

外来に通院中の心不全患者の70%は、左室駆出率が50%以下という報告もあるため、拡張機能低下に早期に気づくことが大切といえます。
また、入院患者の半数近くが収縮機能は正常な拡張機能障害といわれています。心筋リモデリングは拡張機能低下をもたらすため、心筋線維化を改善する降圧薬による治療が、心不全の進展を抑えると考えられています。

高血圧の適正な管理は極めて重要

高血圧は心臓の負担になるばかりでなく、心筋の質的劣化をきたすため、心不全患者の予後改善にとって、その適正な管理は極めて重要です。十分な血圧管理は必須と考えられています。

高血圧を合併した心不全患者の降圧目標値は、130/80mmHg未満とする報告が多いようです。しかしながら、冠動脈疾患を伴う高血圧患者では、拡張期血圧の過降圧が冠灌流圧を低下させてしまい、心筋虚血を増悪させる可能性もあるため「有意な冠動脈狭窄が残っていないか」、「虚血を疑わせる自覚症状がないか」などを確認しながら慎重に目標血圧を目指します。

降圧目標を達成した後は、過度の低血圧をきたさない限り、予後改善を目的とする心不全加療を十分に施行することが重要とされています。

高血圧の治療において心不全の可能性も念頭におくことが大切

高血圧に伴う心機能変化として、最初に認められるのは左室拡張能の低下ですが、この低下が高度になれば、左室収縮能が保たれていても心不全を発症し得るといわれています。したがって高血圧治療では、心不全の合併を念頭において、適時、心不全のスクリーニング検査を実施し、その兆候を早期に発見することが大切です。

単離同定された脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、あるいはNT proBNPの血中レベルは、左室収縮機能不全ならびに拡張機能不全による症候性心不全患者において、著明に増加し、その診断と治療効果の判定に広く臨床応用されています。