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心不全と糖尿病

心不全と糖尿病の関係

フラミンガム研究によると、糖尿病症例における慢性心不全の発生頻度は、非糖尿病群と比較し男性で2倍、女性で5倍高いことが報告されています。また、多くの慢性心不全の大規模臨床試験では、糖尿病を合併している慢性心不全の頻度は増加傾向にあり、1989年では13%、1999年には47%まで増加していることが報告されています。
糖尿病および低HDLコレステロール血症は相互に関連し、両者とも冠動脈疾患の危険度を上昇させるとの報告もあります。糖尿病を合併すると高血圧の予後が増悪しますが、糖尿病自体が直接的に心筋障害をきたすと同時に、他の危険因子を合併すると推測されています。

糖尿病は慢性心不全の強力な危険因子

糖尿病は慢性心不全の強力な危険因子といえ、糖尿病患者において血糖コントロール不良状態が続くと、心筋梗塞や脳卒中、腎臓病に加えて心不全の危険性も高まります。

国立循環器病研究センターでは、糖尿病の管理状態と心不全の予防という観点から、5年間にわたる追跡調査を実施しました。そこでは、血糖コントロール不良群では心不全の入院が多く、特に心臓病を発症したことのある患者では、心不全を防ぐために良好な血糖コントロールが必要である、と報告しています。

この調査の対象患者は平均年齢が66歳で、8割が高血圧と脂質異常症を合併し5割が心筋梗塞や狭心症を有していました。研究チームは、入院が必要な心不全を発症した頻度をカルテで調査するとともに、HbA1c値とその後の心不全入院頻度の関係を解析しました。
その結果、平均5年強の観察期間に15%の患者が心不全で入院し、事前に血糖コントロールが不良であるほど心不全入院が多いことが明らかになりました。

HbA1c値が8%を超えてくると心不全のリスクが高まる

日本糖尿病学会は、合併症予防のための血糖コントロール目標値を「HbA1c 7%未満」とし、治療強化が困難な場合の目標値を「8%未満」と定めています。

今回の国立循環器病研究センターの研究でも、HbA1c値が8%を超えてくると、心不全による入院が増え、特に心筋梗塞など心臓病の既往のある患者で糖尿病管理の影響が大きいことが示されました。HbA1c値を心筋梗塞の既往の有無によって解析したところ、心筋梗塞の既往がある患者では、HbA1c値が「8%以上」と「6.9%以下」で心不全の危険性が高まる傾向がみられ、心筋梗塞の既往のない患者では、HbA1c値が低い方が心不全が少ない傾向がみられています。

糖尿病治療では心不全を悪化させない指導や治療法を慎重に選択することが大切

研究チームは「血糖コントロールは心不全予防の観点からも重要で、HbA1c値を少なくとも8%未満に抑える必要性があり、この目標を達成することで心不全の発症も予防できる可能性がある」と述べています。
また「心臓病を合併した糖尿病患者に対してHbA1c7%未満を目指した治療を行う場合は、心不全を悪化させない指導法や治療法を慎重に選択することが重要となる」と報告しています。

糖尿病の治療において心不全の可能性も念頭におくことが大切

このように糖尿病は慢性心不全と関連性があり、血糖コントロール不良の状態が続くと、心不全の危険性が高まります。糖尿病治療においては心不全の可能性も念頭におき、HbA1c値の管理とともに、場合よっては心不全のスクリーニングなども適時、実施していくことが大切といえます。