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心不全とCKD

心不全とCKDの関係

心臓病と腎臓病は密接な関係にあり、実臨床では心腎連関の重要性が強調されています。また貧血も心不全や腎不全に高率に合併することが明らかとなっており、心腎連関を結びつける機序の一つとして貧血も注目されています。これら一連のつながりを心-腎-貧血(CRA)症候群と称され提唱されています。

2002年に腎機能低下症例に対する臨床分類法として、慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease: CKD)の概念が提唱されました。この基準では慢性腎機能障害の原因にかかわらず、蛋白尿や腎臓の形態変化、あるいは糸球体濾過量(GFR)が60mL/min/1.73m2未満のいずれかが3か月以上持続する状態と定義されています。また、日本では2009年に腎臓病学会が推算式(estimated GFR:eGFR)を提唱しています。

慢性心不全におけるCKDの割合は、ADHERE(Acute Decompensated Heart Failure National Registry)の報告では、男性で60%以上、女性では90%以上と極めて頻度が高く、日本ではJCARE-CARD(Japanese Cardiac Registry and Heart Failure in Cardiology)で、慢性心不全の71%が、CHART(Chronic Heart Failure Analysis and Registry in the Tohoku District)でも43%程度がCKDを合併していることを報告しています。また、心不全の予後がeGFRによって層別化されることも確認されています。

慢性心不全において腎機能低下は最も重要な予後規定因子

慢性心不全において腎機能の低下は重要な予後規定因子といわれており、また腎不全、特に透析症例においては心血管イベントが最も頻度の高い死亡原因となっています。

急性心不全患者に対するループ利尿薬の予後を検討した研究でも、心不全と腎不全を合併した患者は死亡率が高いことが示されており、入院時のGFRは最も強い死亡の予測因子であることが判明しています。

心臓と腎臓の関係をみますと、心不全によって腎臓に必要な血液量を十分に送り込むことができず、その結果、静脈系にうっ血を生じ腎うっ血をきたし、心不全と腎不全が併発します。また、心不全を患うと、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン(RAA)系や交感神経系、抗利尿ホルモン(ADH)といった神経体液性因子が活性化し、心不全及び腎不全をより悪化させます。体液量と血圧の循環動態の維持には、心臓と腎臓が協力して働くことが必要であり、いずれか一方の機能が欠けても支障が生じてしまいます。

慢性腎不全治療にもeGFR(推算糸球体濾過量)を求めて治療戦略を立てることが大切

eGFR 低値は心不全患者の強力な予後規定因子です。したがって慢性心不全の治療を考えるうえで、CKDの存在を避けて通ることはできません。急性増悪期においても腎機能の推移は心不全の行末を占ううえで重要といえます。

このように心不全のさまざまな局面においてCKDの存在意義は極めて重要であり、慢性心不全治療においてはeGFRを求めて治療戦略を立てることが望まれます。

心腎連関におけるバイオマーカー

心腎連関の概念のもと、近年の心血管病の診療は腎機能を念頭に置いて進められています。逆に腎疾患の診療でも心機能をとらえておく必要があります。
これらの必要性を簡便に満たすには、バイオマーカーの測定が有用といえます。
血行動態負荷、心筋壊死、腎障害、炎症、粥状硬化、血管障害をそれぞれに評価することが必要といえます。実臨床では心負荷の指標であるBNPを中心とした、指標による経時的な観察も重要です。腎機能は血清クレアチニン濃度あるいはそれに基づくeGFRにより評価されていますが、より早期の腎機能低下を反映するシスタチンCなどの必要性も高まってきています。

CKDの治療において心不全の可能性も念頭におくことが大切

このように心臓病と腎臓病は密接な関係にあります。CKDの治療においては心不全の可能性を常に念頭において、eGFRなどの評価とともに心不全のスクリーニングなども適時、実施していくことが大切といえます。