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心不全の診断

心不全の定義

慢性心不全治療ガイドラインでは慢性心不全の定義について、
「慢性の心筋障害により心臓のポンプ機能が低下し、末梢主要臓器の酸素需要量に見合うだけの血液量を絶対的にまた相対的に拍出できない状態であり、肺、体静脈系または両系にうっ血を来たし日常生活に障害を生じた病態」と明記されています。 労作時呼吸困難、息切れ、尿量減少、四肢の浮腫、肝腫大等の症状の出現によりQOLの低下が生じ、日常生活が著しく障害される、とも述べられています。

また、急性心不全については急性心不全治療ガイドラインで、
「心臓に器質的あるいは機能的に異常が生じて急速に心ポンプ機能の代償機転が破綻し、心室拡張末期圧の上昇や主要臓器への灌流不全を来たし、それに基づく症状や徴候が急性に出現、あるいは悪化した病態」と定義されています。
急性心不全は新規発症や慢性心不全の急性増悪により起こり、症状や徴候は軽症のものから致死的患者まで極めて多彩である、とも述べられています。

心不全の診断基準

臨床症状に基づいて心不全を疑います。弱く、しばしば速い脈拍、血圧低下、聴診器で確認できる心音の異常、肺への液体貯留、心臓の拡大、頸静脈の拡張、肝臓の腫大、腹部や脚の腫れやむくみなどがあれば、診断を裏づけとなります。

具体的にはフラミンガム研究の「うっ血性心不全診断基準」をもとに、問診や身体所見で評価していきます。

うっ血性心不全の診断基準(Framingham criteria)

大症状2つか、大症状1つおよび小症状2つ以上を心不全と診断する。

[大症状]
・発作性夜間呼吸困難または起座呼吸
・頸静脈怒張
・肺ラ音
・心拡大
・急性肺水腫
・拡張早期性ギャロップ( III 音)
・静脈圧上昇(16cmH2O以上)
・循環時間延長(25秒以上)
・肝頸静脈逆流

[小症状]
・下腿浮腫
・夜間咳嗽
・労作性呼吸困難
・肝腫大
・胸水貯留
・肺活量減少(最大量の1/3以下)
・頻脈(120/分以上)

[大症状あるいは小症状]
・5日間の治療に反応して4.5kg以上の体重減少があった場合、それが心不全治療による効果ならば大症状1つ、それ以外の治療ならば小症状1つとみなす

心不全の自覚症状と他覚所見

心不全の主病態は、左房圧上昇および低心拍出量に基づく左心不全と、浮腫・肝腫大などの右心不全に大別されます。これらに伴う症状と所見を診断する必要があります。

左房圧上昇に伴う自覚症状としては、肺うっ血に由来した呼吸困難感が主体となります。初期は安静時には無症状であり、労作時に軽度の息切れを自覚するのみであることも多いといえます。また、進行例においても安静が習慣となっているため、症状があることに気付かないことも少なくありません。重症になるにつれて夜間の発作性呼吸困難や起座呼吸が出現してきます。
他覚所見としては、水泡音、喘鳴、ピンク色泡沫状痰、III 音や IV 音の聴取があります。

低心拍出状態の自覚症状としては、血圧低下や尿量減少があります。また、全身倦怠感や食思不振など非特異的な症状も出現してきます。
他覚所見としては、低血圧、冷汗、四肢冷感、チアノーゼ、身の置き場のない様相、などがあります。

右心不全の自覚症状は、上昇した右房圧による体うっ血に由来します。下腿浮腫や肝腫大などの体うっ血が原因で右季肋骨痛や腹部膨満感が出現します。また、腸管のうっ血により食思不振や嘔気・嘔吐などの消化器症状も呈します。
他覚所見としては、肝腫大、肝胆道系酵素の上昇、頸静脈怒張、右心不全が高度な時は、肺うっ血所見が乏しい、といったことが認められます。

通常、右心不全は慢性の左心不全に伴うことが多く、両心不全の病態をとるのが一般的といわれています。

症状と身体所見から心不全が疑われた場合は、採血・検尿・心電図・胸部X線検査などを実施し、診断の妥当性を検討します。

心不全に用いられる検査

胸部X線検査

胸部X線検査では、心陰影拡大のような構造的評価と、肺うっ血のような機能的評価を行います。心陰影拡大の評価には、心腔拡大以外にも心嚢水貯留など他の要因も考慮します。
また、急性心不全の診断および治療効果判定においては、肺血管陰影の読影が重要となります。

胸部X線検査では、心膜・胸膜・大動脈などをすべて評価する必要があります。

BNP・NT-proBNP

BNP(Brain natriuretic peptide)やNT-proBNP(N-terminal-pro BNP)は、心不全の病態を鋭敏に反映する有用なマーカーとして広く普及しています。

BNPは、心筋細胞にて前駆体ホルモンであるproBNPによって合成される心臓由来のホルモンです。蛋白分解酵素により、生理活性を有するBNPと生理活性のないNT-proBNPに分解され血中に放出します。

BNPやNT-proBNPは、主に心室で壁応力(伸展ストレス)に応じて遺伝子発現が亢進し、生成・分泌されます。従って、壁応力が増大する心不全では、その重症度に応じて血中濃度が増加します。また心房細動などでも軽度上昇するといわれています。

腎機能の低下でも血中濃度が上昇します。また、高齢者や急性炎症でも高い値を示すことがあります。逆に、肥満者では非肥満者より低値を示します。

心エコー

心エコーは、心拍出量や心臓弁などの心機能を評価するのに優れた検査法です。
心エコーでは、以下の項目を検査します。

・心臓壁が正常に厚くなり、弛緩するか
・心臓弁が正常に機能しているか
・正常に収縮しているか
・心臓で収縮の異常がみられる部位はないか

心臓の壁の厚さと硬さ、駆出分画(1回の拍動で心臓から送り出される血液の割合)を評価することで、収縮機能不全か拡張機能不全かを診断できます。駆出分画は心機能を測る重要な指標であり、正常な左心室の駆出分画は約60%で、駆出分画が低い場合は収縮機能不全と確定できます。駆出分画が正常、または高い場合は拡張機能不全が考えられます。

このほか、心不全の原因を究明する目的で、CT検査、MRI検査、放射性核種スキャン、血管造影検査を伴う心臓カテーテル検査などが実施されることもあります。