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甲状腺の基礎知識

甲状腺の位置

甲状腺は喉頭の下方、気管の前方に接し、気管前半部を包むように位置しています。蝶が羽を広げたような形状をしており、左右の甲状腺葉(右葉・左葉)と2つの甲状腺葉を繋ぐ峡部から成り立っています。

正常な甲状腺は縦4cm、重さ18g、厚さ数mm程度の大きさです。柔らかい器官であり、甲状腺の周りには筋肉が多く存在しているため、外見上では認識できず、かろうじて触れることができる程度です。

しかし、甲状腺機能に異常が起こると、大抵の場合「甲状腺腫大」や「甲状腺の一部が腫れる」などの異常を認めます。さらに、ある程度以上腫大すると、頸部のふくらみが目立つようになります。また、しこりができることもあります。

甲状腺疾患の診断は比較的容易ですが、多彩な症状を呈するため、症状から検査実施にまでこぎつけることが難しいと考えられています。
甲状腺疾患の診断は触診、血液検査、エコーなどで行われます。

甲状腺の機能

甲状腺の機能は、甲状腺の濾胞細胞で生命維持に必須の「甲状腺ホルモン」を産生することです。甲状腺ホルモンは脳、心臓、骨、筋肉、皮膚など全身の新陳代謝を調節する作用があり、この甲状腺ホルモンの分泌量が過剰になっても不足しても代謝にかかわる部分に異常をきたします。

また、甲状腺のC細胞(傍濾胞細胞)からは「カルシトニン」というホルモンも分泌されています。カルシトニンは血中のカルシウムとリン酸を低下させる作用があり、血中のカルシウム濃度を調節しています。

身体の代謝に密接に関係している甲状腺ホルモンに“過剰”や“不足”がみられると、甲状腺の機能に異常が生じます。
甲状腺ホルモンが“過剰”に分泌されている状態では、代謝が亢進します。そのため、安静にしていても脈が速くなって動悸がしたり、たくさん食べられるのに痩せてきたりします。
一方、甲状腺ホルモンの分泌が“不足”すると、体内の代謝がうまく行われなくなり、だるさ、気力の低下、動作が緩慢になるなどの症状がみられるようになります。

甲状腺ホルモンの作用

甲状腺では、食物中のヨードを材料にして、2種類の「甲状腺ホルモン」が合成され、血中に放出されています。

この甲状腺ホルモンは、ヨードが3個結合したトリヨードサイロニン(Triiodo thyronine:T3)とヨードが4個結合したサイロキシン(Thyroxine:T4)の2種類があり、主な役割は全身の新陳代謝を調節するというものです。甲状腺から血中に分泌された甲状腺ホルモンは、大部分が血中の蛋白質と結合した状態で存在しています。しかし実際にホルモン作用を発揮するのは蛋白に結合していないフリーT3(FT3)やフリーT4(FT4)であり、そのため甲状腺機能の評価はFT3、FT4で測定します。

甲状腺ホルモンの分泌は、脳下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)によって調節されており、甲状腺ホルモンの濃度を常に一定の値に維持しています。
ところが、何らかの原因で甲状腺ホルモンのバランスが崩れ、分泌量が増減すると様々な症状が出現します。そのため甲状腺疾患の治療では、甲状腺ホルモンを正常な量にコントロールすることがポイントになります。

甲状腺疾患の分類

甲状腺疾患は、下記の3つに分類されます。
①機能異常
②炎症
③腫瘍

「機能異常」をきたす病態には、ホルモン産生が過剰な「甲状腺機能亢進症」とホルモン産生が不足している「甲状腺機能低下症」があります。代表的な疾患としては「甲状腺機能亢進症」はバセドウ病、「甲状腺機能低下症」は「橋本病」が挙げられます。

「炎症」は、甲状腺組織の炎症性の破壊に起因するもので、代表的な疾患としては「亜急性甲状腺炎」や「無痛性甲状腺炎」などがあります。

「腫瘍」は、「良性」と「悪性」に分けられます。代表的な疾患として「良性腫瘍」は甲状腺良性腫瘍、腺腫様甲状腺腫、「悪性腫瘍」は組織型により分化癌(乳頭癌、濾胞癌)、低分化癌、未分化癌、髄様癌、悪性リンパ腫に分類されます。

疫学調査では10人に1人が何らかの甲状腺疾患を抱えていると推定されており、特に「バセドウ病」と「橋本病」が多くみられます。