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甲状腺疾患の特徴

単純性びまん性甲状腺腫

特徴

良性腫瘍である「甲状腺腫」は、甲状腺全体が腫れる「単純性びまん性甲状腺腫」と、甲状腺内に腫瘤(しこり)ができる「結節性甲状腺腫」の2つに大別されます。結節性甲状腺腫については、まれに悪性の腫瘤もあるため、精密検査で良性・悪性かを鑑別します。
思春期(成長期)を迎えた若い人に多くみられる「単純性びまん性甲状腺腫」は、血中の甲状腺ホルモン値は正常にも関わらず、甲状腺は広範囲にわたり肥大化します。甲状腺機能の異常はなく、炎症や腫瘍などといった症状もみられません。

検査法

将来的に機能異常が生じる可能性があるため、定期的な検査を行う必要があります。検査は、触診、血液検査、超音波(エコー)検査などによって行われます。触診は、腺腫がびまん性か結節性かを診断するきっかけの検査として重要な役割を果たします。甲状腺ホルモン値を調べる血液検査は、橋本病やバセドウ病などとの区別をするために行います。超音波検査は、腫瘍の有無を調べる検査で結節性甲状腺腫と区別するために必要です。

治療法

症状は「頸の腫れ」がほとんどですが、腫れは一時的なものであり、原則、治療の必要はありません。しかし、将来バセドウ病や橋本病などになる可能性があるため、年に数回の定期的な検査を行い、経過を観察します。気管の圧迫症状が強いときや、美容上影響がある患者さんには手術を行うこともあります。

バセドウ病

特徴

「バセドウ病」は、甲状腺ホルモンが多量に分泌されて全身の代謝が亢進する「甲状腺機能亢進症」を起こす代表的な疾患です。甲状腺疾患の中で患者数が多いのがこの「バセドウ病」と「橋本病」で、他の甲状腺疾患と同様、女性の割合が高く、女性患者は男性患者の5倍程度といわれています。自己免疫疾患であるバセドウ病は全身に様々な症状が現れますが、突眼症など目の変化が特徴的です。診断の手がかりとしては甲状腺の腫大、頻脈、眼球突出の3つの症状があげられますが、必ずしもすべての症状が現れるとは限りません。

検査法

全身に様々な症状が現れるために見逃されることが多い「バセドウ病」は、TSH(甲状腺刺激ホルモン)、FT3(フリーT3)、FT4(フリーT4)、TRAb(TSHレセプター抗体)の数値を測定して診断します。これらの検査は1回の採血ですべて測定することができます。
全身の代謝が亢進する「甲状腺中毒症」の原因の多くはバセドウ病といわれていますが、バセドウ病に似た症状を呈する「無痛性甲状腺炎」などの可能性もあるため、ガイドラインに基づく鑑別診断が重要になります。
いわゆる一般的な健康診断には甲状腺疾患関連の検査項目は含まれていませんが、健康診断受診者のうち2.9%に甲状腺中毒症の疑いがあるTSH低値異常が見つかるとの報告もあります。

治療法

治療は、甲状腺機能の正常化を目的に(1)内科的治療(抗甲状腺薬)(2)外科治療(3)放射線治療-の3種類の方法があります。日本では内科的治療が第1選択となっており、甲状腺ホルモンの合成を抑える抗甲状腺薬が用いられます。
抗甲状腺薬治療の第1選択薬とされるMMI(メルカゾール(R))は、FT4が7ng/dL未満の軽症・中等度バセドウ病では15mg投与でも30mg投与でもその効果に大きな差が無いことが報告されています。一方、MMIの副作用は15mgと比較し30mgでは副作用の頻度が高いことがわかっています。このため、『バセドウ病治療ガイドライン2011』では、抗甲状腺薬の初期投与量について「軽度および中等度(たとえば治療開始前のFT4値が7ng/dL未満)の甲状腺機能亢進症患者には、MMI1日15mgから開始することが推奨される。」「重度(たとえば治療開始前のFT4値が7ng/dL以上)の甲状腺機能亢進症患者ではMMI30mg/日から開始するのがよい。」としています。

橋本病

特徴

甲状腺疾患の中でも患者数の多い「橋本病」は、甲状腺に慢性の炎症が起こり、甲状腺が腫れてくる良性疾患です。このため、別名「慢性甲状腺炎」ともいわれています。ほとんどの患者さんは甲状腺機能は正常に保たれていますが、進行すると「甲状腺機能低下症」になることがあります。「橋本病」の名前の由来はバセドウ病と同様、この疾患について初めて論文を発表した医師・橋本博士にちなんで名づけられました。甲状腺疾患の中でも特に女性に多く、10〜30人に1人が罹患しているという統計もあります。

検査法

「甲状腺機能低下症」の原因は幾つかありますが、最も多い原因は「橋本病」によるものです。甲状腺機能低下症では、生理不順、無気力、易疲労感、寒がり、体温低下、皮膚乾燥、便秘、記憶力低下、物忘れ、体重増加、むくみなどの症状が現れますが、機能低下が軽度の場合においてはどの症状も明らかではないため、診断が確定するまで見逃されてしまうことも少なくありません。
このため「橋本病」の疑いがある場合はTSH(甲状腺刺激ホルモン)・FT4(フリーT4)・TgAb(抗サイログロブリン抗体)・TPOAb(抗ペルオキシダーゼ抗体)を測定し、診断することが重要となります。
いわゆる一般的な健康診断には甲状腺疾患関連の検査項目は含まれていませんが、健康診断受診者のうち6.4%に甲状腺機能低下症の疑いがあるTSH高値異常が見つかるとの報告もあります。

治療法

甲状腺機能が正常の場合は、甲状腺ホルモンの過不足がなく、身体に影響が現れることがないため、定期的な観察をするだけで治療の必要はありません。しかし、甲状腺機能の低下がある場合には治療が必要になります。橋本病は自己免疫疾患のため、根治的治療はありませんが、甲状腺ホルモン薬を服用し、甲状腺ホルモンを正常な量にコントロールする治療を行います。治療に用いられる甲状腺ホルモン薬は体内の甲状腺ホルモンと同じ成分ですので、副作用の問題はほとんどありません。

亜急性甲状腺炎

特徴

甲状腺に急性の炎症が起こり、細胞が破壊されて血液中の甲状腺ホルモンが高値となる疾患です。甲状腺ホルモンが多量に分泌されるため、一過性の甲状腺機能亢進症状を示しますが、通常、甲状腺機能は正常状態に回復します。甲状腺疾患は腫れがあっても痛みがない場合がほとんどですが、亜急性甲状腺炎は痛みを伴うのが特徴です。原因としてウイルス感染が有力視されていますが、他人に感染することはないといわれています。患者は30歳代、40歳代の女性に多い傾向です。

検査法

検査は血液中のTSH(甲状腺刺激ホルモン)・FT4(フリーT4)を測定して甲状腺機能の評価を行い、血液検査のCRP(C反応性タンパク)・ESR(赤沈)などで炎症所見を確認します。亜急性甲状腺炎は、血液検査所見ではFT4が高値、TSHが低値、炎症反応が陽性となります。さらに超音波(エコー)検査で腫れの確認を行い、疼痛部位に低エコー像を確認できれば亜急性甲状腺炎と診断できます。また、バセドウ病との鑑別のためにアイソトープ(放射性ヨウ素)検査が行われることもあります。

治療法

亜急性甲状腺炎は自然治癒する疾患ですので、治癒するまでの症状改善が目的の治療となります。そのため、治療は痛みや発熱などに対する対症療法が中心です。痛みが少ない軽症例には抗炎症薬、特にアスピリンが有効と考えられています。一方、痛みがひどい重症例には副腎皮質ホルモン(ステロイド)を投与することもあります。また、動悸の症状に対してはβ(ベータ)遮断薬を使用します。

腫瘍性疾患

特徴

甲状腺腫瘍は、他の疾患と同様、良性腫瘍と悪性腫瘍(癌)に分けられます。良性腫瘍は腺腫、嚢胞、腺腫様甲状腺腫の3種類に分類されています。一方、悪性腫瘍は4種類の甲状腺癌(乳頭癌、濾胞癌、髄様癌、未分化癌)と悪性リンパ腫があります。甲状腺腫瘍のほとんどは良性腫瘍ですが、時として悪性腫瘍の場合がありますので、腫瘍が悪性か良性かを鑑別する検査が大変重要となります。

検査法

甲状腺腫瘍は、甲状腺機能は正常のことが多く、頸の腫瘤(しこり)が唯一の所見と考えられています。そのため、検査では腫瘤が良性か悪性であるかを鑑別することが重要なポイントとなります。腫瘍マーカーなどの検査も行いますが、中心となるのは超音波(エコー)検査と穿刺吸引細胞診で、穿刺吸引細胞診は良性か悪性かを見分ける決め手となります。悪性の場合には、癌の種類についても調べることが大切です。

治療法

良性腫瘍は、一般的には定期的な経過観察のみで、基本的に治療は必要ありません。しかし、時に腫瘤を小さくするために甲状腺ホルモン薬を服用する治療が行われます。また、腫瘍の肥大がみられたり、悪性の可能性があるケースなどでは、手術が勧められる場合もあります。
悪性腫瘍の場合は、手術による腫瘍の摘出が必要ですが、甲状腺癌はほとんどの場合、進行スピードはゆっくりで、予後も比較的良い癌といわれています。